覆った二酸化チタンの発がん性分類
無機成分のみの日焼け止め製剤が増加傾向にあります。皮膚に塗布する日焼け止めに使用しても安全と承認されているが、一部の粉末状の二酸化チタンはEUでは吸入による発がん性物質と分類されていました。しかし、この分類が覆されたのです。このブログでは、それが化粧品にとって何を意味するのかを探っていきます。
編集:2023年3月8日更新
2023年2月13日、フランス政府はこのブログで取り上げている判決に対して控訴すると発表しました。詳細については、こちらのプレスリリースをご覧ください。控訴の手続きは通常1~2年を要し、これは実際問題として、控訴手続きの終了までこの分類は依然として有効であるということを意味しています。
無機成分のみの日焼け止め製品が注目を集めています。過去5年で、二酸化チタンや酸化亜鉛のみを含む日焼け止めの新製品数は、Mintel GNPDによると80%増加しました。この傾向は、二酸化チタンと酸化亜鉛がアメリカ食品医薬品局(FDA)によって一般に安全かつ有効(GRASE)と認められている唯一のUVフィルターであることによって大きく推進されています。FDAとEUは、これらのUVフィルターが皮膚にほとんど浸透せず、粒子のサイズに関係なく、皮膚に塗布する日焼け止めとして安全であると述べています。
有機系UVフィルターは、同様に規制当局および立法機関によって調査中です。そのうち2種類は、サンゴの白化の懸念により一部地域で既に禁止対象となっています。さらに、ヒトへの安全性も注目されています。FDAは、ヒトへの安全性に関するGRASEへの該当状況を裏付けるため、米国で承認されている有機系UVフィルターに関する追加の安全性データを要請しています。
しかし、無機系UVフィルターについても議論の余地がないわけではありません。一部の粉末状の二酸化チタンは、欧州の危険有害性分類ではカテゴリー2の吸入による発がん性物質として分類されています。Croda BeautyのSolaveil粉末および分散体には該当しませんが、これによって業界内では一部の製品について吸入時の安全性への疑念が生じました。
なぜ分類は覆ったのでしょうか?
2022年11月23日、欧州司法裁判所がカテゴリー2の発がん性物質としてのこの分類は違法であると判決し、この分類が覆されました。これにより、二酸化チタンはEUでは危険有害性物質としては分類されず、今後は危険有害性の分類に関する義務も適用されなくなるということを意味しています。
判決の取り消しの主な理由は、この分類の根拠となった研究の信頼性および受容性の評価に誤りがあり、分類を適用できるのはがんを引き起こす固有の特性を有する物質のみであるというものでした。
この判決に対する二酸化チタン業界の反応は?
二酸化チタン製造業者協会(TDMA)は、次のようにコメントしています。「TDMAとしては、この結果を歓迎しますが、TiO2の安全性に関する科学的コミュニケーションの改善についてTiO2業界にとってはいくつかの教訓があったことも認識しています。TDMAは、欧州当局および加盟国の当局と協力し、懸念や、下流のユーザーや申請に対するこの判決の影響に対し対応してまいります。TDMAは常に、労働者の安全の向上に取り組み、追加の安全性データの入手と研究結果を最新のガイドラインおよび科学技術にアップデートする目的で、意義のあるTDMAの科学プログラムへの投資を引き続き行ってまいります。」
この判決は欧州における化粧品にとってどのような意味がありますか?
この判決による化粧品への下流の影響はまだ完全には明らかになっていません。しかし、この判決は、二酸化チタンは他の粉塵粒子と何ら変わらず、がんを引き起こす固有の特性を有していないという安心感を化粧品業界と消費者に与えるものです。
まとめ
Croda Beautyでは、お客様に規制に関する最新情報を提供するだけでなく、将来の法律制定に役立つよう、関係当局にも有用な科学的情報やデータを提供しています。遡ること1985年に初めて無機系UVフィルターを上市して以来、私たちは業界パートナーとともに評価に積極的に携わり、二酸化チタンと酸化亜鉛の安全な使用の継続を支えてまいりました。
UVフィルターとそれがヒトの健康や環境に及ぼしうる影響は、規制当局によって常に厳しく監視されており、近年ではさらにその注目度が高まっています。そして、どのUVフィルターも完全に監視から免れることはありませんが、無機系UVフィルターは幸いにも有機系ほど厳しくは監視されておらず、その結果、日焼け止めおよびスキンケア製品で使用されるUVフィルターとして今後も最も増加し続けます。
欧州司法裁判所によるこの判決は、二酸化チタンにとっては意義のある前向きな一歩となり、業界にとってもこの重要な無機系日焼け止め有効成分の安全性についての安心材料となりました。
このブログで取り上げたトピックについて詳細情報をお望みの場合やサンケアの開発へのサポートをお求めの場合は、ご遠慮なく弊社までお問い合わせください。弊社営業担当者が皆様の分野における処方専門家をご紹介いたします。
参考資料
i https://www.federalregister.gov/documents/2019/02/26/2019-03019/sunscreen-drug-products-for-over-the-counter-human-use
ii https://health.ec.europa.eu/system/files/2019-02/sccs_o_206_0.pdf
iii https://ec.europa.eu/health/scientific_committees/consumer_safety/docs/sccs_o_136.pdf